帰化の種類
帰化の種類については、国籍法に3種類が定義されています。
帰化の要件によって ①普通帰化 ②簡易帰化 ③大帰化 の3種類があります。
それぞれの帰化要件をきちんと確認することが大切です。
普通帰化
普通帰化の対象となるのは、一般的な外国人の方です。つまり、両親が外国人であり、普通に外国で生まれて留学生として日本にやって来てそのまま日本で就職したような人が該当します。日本で生まれた在日韓国人などは除きます。
普通帰化の要件
普通帰化の要件には①住居要件②能力要件③素行要件④生計要件⑤喪失要件⑥思想要件⑦日本語能力要件の7つがあります。
①住居要件
引続き5年以上日本に住所を有すること
これは要するに「5年以上継続して日本に住んでいますか」ということです。注意すべき大事な点は、「引き続き」の意味です。例えば、2年間日本に住んだ後に1年間海外に行って再度日本に戻って着て3年間住んだ場合は、「引き続き」該当しませんので注意が必要です。この場合は、海外に行く前の2年間はカウントできなくなり、再来日後の3年間にさらにあと2年間住まなければなりません。
「引き続き」が切れるかどうかの目安は、1回の出国日数がおおよそ90日(3か月)です。1回の出国日数が90日(3か月)以上となった場合は、「引き続き」とみなされない可能性が高まります。その出国は、プライベートな旅行はもちろんのこと、仕事上の長期海外出張であれ、母国での出産であれ理由は考慮されることはなく中断とみなされてしまいます。
また、1回の出国は90日(3か月)より短くとも、短期の出張などを繰り返し1年間におおよそ合計で120日程度以上の出国がある場合も「引き続き」とみなされない可能性が高まります。
さらには、「引続き5年以上」の滞在期間の中身が大切です。この5年の期間には就職して仕事をしている期間が3年以上必要となります。アルバイトではなく、きちんと就労系の在留資格(ビザ)での滞在であることが必要です。ですので例えば、5年間すべてが留学生としての滞在であった場合は該当しないこととなります。この場合は、さらにあと3年就労系ビザでの就職しての滞在が必要となります。
ただし、日本に10年以上住んでいる方は例外があります。就労での滞在が3年なくても1年以上あればOKです。
②能力要件
申請人は20歳以上であること
帰化するには20歳以上であることが必要です。20歳未満の場合は、単独では要件を満たせず申請ができません。ただし例えば、未成年の子が両親と一緒に帰化申請する場合は、帰化が可能です。
③素行要件
これは要するに法令等を守り、まじめに生活している人であることです。罰金などの前科や重大な交通違反がないこと、住民税などの税金や年金をきちんと払っていることが求められます。
・税金
税金については、住民税に注意が必要です。会社員の方は給与明細を確認してみてください。住民税が給与天引きされていれば問題はありませんが、給与天引きされていない場合は自分で申告の上納付する必要があります。もちろん、自分できちんと納付していれば問題はありません。万一、住民税を支払っていない場合は、必ず未納分を支払ってください。そうすれば、帰化申請の添付書類である納税証明書に未納額は記載されませんので大丈夫です。
結婚されている方は、配偶者の納税証明書も提出しますので、自分に未納がなくても配偶者に未納があると審査は通りませんので確認が必要です。
また、住民税については「扶養」について注意が必要です。配偶者や母国の両親等を扶養に入れれば自分の税金は安くなりますが、扶養に入れるには例えば配偶者であれば、配偶者が働いている場合は、その年間収入が103万未満でなければなりません。しかし、収入額の基準を超えているにもかかわらず、扶養にいれている方がいます。ですので基準の確認が必要です。万一、扶養に入れられないのに扶養に入れていた場合は、扶養を外して修正申告をして正しい住民税を納付しなければなりません。母国の両親についても現役で働いているにもかかわらず扶養にいれている場合は同様に扶養をはずして修正申告の上、未納分を支払う必要があります。本当に扶養しているのか、例えば両親への送金記録などの証拠が求められますので虚偽申請は通じません。
さらに、法人を経営している方や個人事業主の方は、自分個人の分だけではなく法人としての税金(法人税)や個人事業としての税金(個人事業税)もきちんと支払っている必要がありますので注意が必要です。
・交通違反と前科歴
交通違反や犯罪等で警察に捕まったことがあるかどうかがポイントです。
交通違反については、過去5年間の経歴を見られます。あまり回数が多いと問題ですが、駐車違反や一時停止違反等の軽微な違反が過去5年間で5回程度であれば大丈夫です。しかし、飲酒運手や人身事故などは相当期間を経ないと帰化は認められません。
犯罪については、喧嘩や万引きがよくあるケースですが、不起訴であれば問題はありませんが、罰金刑となっている場合は、その金額により2年~5年の経過が必要となります。
・年金
会社員の方は会社で厚生年金に加入していて、給与から厚生年金保険料が天引きされている方は、問題ありません。しかし、厚生年金に加入していない会社に勤めている方や自営業の方は国民年金に加入して、国民年金保険料を支払っていることが必要となります。外国人だから国民年金を支払う必要がないことにはならず、日本に住んでいる以上支払い義務があります。厚生年金や国民年金を支払っていない場合は、国民年金を直近1年分支払ってください。直近1年分の国民年金を支払ってその領収書を提出することで年金の要件は満たすことになります。
また、会社経営者の方は会社として厚生年金に加入していることも帰化の要件として必要です。万一、今まで厚生年金に加入していなかった経営者の方は、今から厚生年金に加入して厚生年金の支払いを開始し、1年分の支払いを完了した時点で要件を満たすこととなります。
④生計要件
日常生活に困窮することなく通常の生活ができているかということです。多額の貯金があることよりも安定した職業に就いていて毎月の安定的な収入があることがポイントです。配偶者の方で無職の場合などは家族の収入で安定的な生活ができていれば大丈夫です。
給与の目安としては、月18万~20万くらいであれば問題ありません。
家は持ち家でなく賃貸でも大丈夫です。また、住宅や自動車などの借金があっても滞りなく返済している状況であれば問題ありません。自己破産したことがある方は7年経過していれば大丈夫です。
⑤喪失要件
これは、日本に帰化したら母国の国籍を失うことができるもしくは離脱することができることです。日本は二重国籍が認められていないためです。男性で兵役義務がある国の方は、兵役を終わらないと国籍離脱ができない場合がありますので、母国での確認が必要です。
⑥思想要件
これは、要するに日本国を破壊するような危険な思想・信条を持っていないことです。テロリストや暴力団などが該当します。
⑦日本語能力要件
帰化申請では、ある程度の日本語能力も必要となります。日本語能力検定試験の3級を持っていれば問題ありません。
日本語能力については、日本語テストがありますが、実際は申請された外国人全員には行っていないようです。申請・相談や面談の際に審査官との会話の中で「この人は少し日本語能力が弱いかな?」と思われた人に対して実施されるということのようです。ですので、日本企業に就職して滞在している方などは問題ありませんが、例えば日本人の配偶者として日本滞在が短い人などはネックとなる場合があります。
・普通帰化要件の補足
普通帰化の対象となる一般的な外国人の方は、日本人と結婚しているか、いないかで要件が変わってきます。一般的なというのは、日本人と結婚している方や特別永住者を除いた外国人の方です。
外国人どうしで結婚している方や子供がいる方に「家族全員で帰化しないといけないのでしょうか?」という質問を受けますが、必ずしも家族全員で帰化する必要はありません。本人だけ帰化して配偶者や家族・子供は帰化しないことも可能です。
夫婦一緒に帰化したい場合ですが、例えば夫は帰化の要件を満たしているが、妻は要件を満たしていない場合に1人(この場合は夫)が帰化要件を満たしていれば、その配偶者(この場合は妻)が帰化要件を満たしていなくても同時申請して許可となるケースが多くあります。これは、1人が帰化許可になれば、その配偶者は自動的にその時点で日本人と結婚している配偶者となり、日本人と結婚している外国人の方は帰化要件が緩和されているためです。ですので、申請時に「日本人と結婚している外国人の帰化要件=簡易帰化の要件」を満たせば帰化が可能となります。
簡易帰化
簡易帰化とは、主に在日韓国人・朝鮮人(特別永住者)の方や日本人と結婚している外国人配偶者等で一定の条件を満たす場合に「普通帰化」よりも帰化の条件が緩和または免除されている帰化です。簡易という言葉が使われていますが、帰化の条件のハードルが低くなっているだけで、申請書類のボリュームや申請手続き自体は簡易にはなっていません。
簡易帰化の代表的なケースを見てみましょう。
A.住居要件の緩和
次の1~3に当てはまる場合は、住居要件が緩和されますので、日本に引き続き5年以上住んいなくても帰化申請が可能です。
1.日本国民であった者の子(養子を除く)で、引続き3年以上日本に住所または居所を有する人
このケースは、両親が外国に帰化して自分も外国籍になっているケースが該当します。例えば、日本人家族が一家そろってオーストラリアへ移住してオーストラリア国籍を取った場合などは、父母はオーストラリア国籍のままで子供が日本国籍を取りたい場合にその子は「日本国民の子であった者の子」に該当しますので、引続き3年以上日本に住めば日本国籍を取得できるということです。
2.日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所もしくは居所を有し。又はその父もしくは母(養父母を除く)が日本で生まれた者
このケースは、日本で生まれた在日韓国人・朝鮮人の多くの方が該当します。
3.引き続き10年以上日本に居所を有する者
一般の外国人の方で10年以上日本に住んでいる方は、1年以上の就労経験があれば帰化が可能となります。また、2.の日本で生まれた在日韓国人・朝鮮人の多くの方も該当します。
B.住居要件と能力要件の緩和
次の4~5に当てはまる場合は、住居要件と能力要件が緩和されますので、日本に引き続き5年以上住んでおらず、かつ20歳未満であっても帰化申請が可能です。
4.日本国民の配偶者たる外国人で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し、かつ現に日本に住所を有する者
このケースは、日本人と結婚している外国人の方が該当します。日本に3年以上住んでいる場合、日本人と結婚した時点で帰化申請が可能となります。
5.日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から3年を経過し、かつ引き続き1年以上日本に住所を有する者
このケースは、4.と同様に日本人と結婚している外国人の方が該当します。例えば、日本人と結婚して外国で生活していたが、その後日本に来日して1年以上住んでいる場合は帰化申請が可能となります。
C.住居要件、能力要件、生計要件の緩和
次の6~9に当てはまる場合は、住居要件、能力要件、生計要件が緩和されますので、引続き5年以上日本に住んでおらず、20歳未満で、かつ帰化申請者本人やその家族の力で生活できない場合であっても帰化新申請が可能となります。
6.日本国民の子(養子を除く)で日本に住所を有するもの
このケースは、両親だけが先に帰化して日本人となっていて、その子供が後で帰化する場合や日本人の子であるが日本国籍を選ばなかった人が後に帰化申請する場合が該当します。
7.日本国民の養子で引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ縁組の時本国法により未成年であった者
このケースは、親の再婚などにより未成年の時に連れ子として日本に来た外国人の方で、来日の時に義理の父(母)と養子縁組した場合が該当します。
8.日本の国籍を失った者(日本に帰化した後日本の国籍を失った者を除く。)で日本に住所を有する者
このケースは、外国籍になった日本人が、再度日本国籍に戻る場合が該当します。
9.日本で生まれ、かつ出生の時から国籍を有しない者でその時から引き続き3年以上日本に住所を有する者
大帰化
大帰化とは、日本に対して特別に功労実績のある外国人に対して許可されるものですが、現在まで許可された前例がありません。